『ふくろ小路一番地』を読みました。
『ふくろ小路一番地』
イーヴ・ガーネット
石井桃子訳
イギリスのオトウェルという街に住む、ごみ収集の父親と洗濯屋の母親と7人の子供たちの、面白おかしくて愛しいエピソードが10ならんでいる。
人絹、しんがり、公休日の「身代かぎり」、その他の少しおばさんぽい日本語訳でお喋りするように綴られている文章を読むと、祖母や母の話を聞いている気分になる。
私のお気に入りは黒手ギャングに加わった双子のジムとジョンそれぞれの冒険と、ラッグルス父さんが小説家のショート氏のお金を拾ったおかげで家族全員でおめかししてロンドンへ出掛ける話。特にラストがとびきり洒落ている。
子供たちそれぞれが自分に起きた問題をどうにか自分で解決しようとするところが良い。やっぱりヨーロッパは個が確立されているということなのかな?
『マルコヴァルドさんの四季』を読みました。
『マルコヴァルドさんの四季』
イタロ・カルヴィーノ
関口英子訳
『まっぷたつの子爵』が好きなのと、暮しの手帖で高山なおみ愛読書と出ていたので読んだ。50年以上前にイタリアで書かれた都市生活の悲喜こもごもが今の日本人の暮らしにピッタリ重なることに驚いた。都市生活者、労働者としての共感と慰めと気づきが、ドタバタなユーモアと共にすっと心に入って来る。そしてどれもお洒落。
『ズボンをはいたロバ』を読みました。
『ズボンをはいたロバ』
アンリ・ボスコ
多田智満子訳
主人公のコンスタンタン少年が、孤児の少女イヤサントから、彼の祖母が病気であることを知らせる手紙をもらう。手紙の裏に書かれた「小さなイヤサントより」という一言が、立派なラブレターの役割を果たす。文中には勿論「ラブレター」なんて言葉はなくて、「情熱的な友情の告白」と表現されている。恥ずかしながら、そのエピソード以降、がぜん前のめりで読んだ。
『イン・ザ・ペニーアーケード』を読みました。
『イン・ザ・ペニー・アーケード』
スティーヴン・ミルハウザー
柴田元幸=訳
十数年振りの再読。
第一部のからくり人形師の話『アウグスト・エッシェンブルク』と、第三部の『東方の国』の印象が当時の私には強過ぎて、その他の話、特に第二部の女性が主人公の話の記憶が殆ど無かった。
今回も『アウグスト・エッシェンブルク』を身を乗り出す気持ちで読み、美しい『東方の国』に心奪われたが、第二部の細々とした情景描写であらわされた「女の気持ち」に驚いた。
ミルハウザーはこんなのも書いていたのね。