briefeannatsuの日記

読書メモ

『お勝手太平記』を読みました。

『お勝手太平記』 金井美恵子著アキコさんという60代の女性が、友人宛に書いた手紙を並べた小説です。手紙でも、メールでも、実際に会っての会話でも、いちばん私が楽しく幸せに感じるのは、相手とちょっとした、ある感覚を共有できていると確信する瞬間で…

『えほん七十二候』を読みました。

『えほん七十二候 はるなつあきふゆめぐるぐる』 白井明大作 くぼあやこ絵小さい頃、眠る前に母からよく聞かされた母の子ども時代の話を思い出す。 音読すると気持ち良い。

『山とそば』を読みました。

『山とそば』 ほしよりこ著登山の最中に蕎麦を食べる、趣味を極めたような本だとずっと思い込んでいて、私には関係ないと、ながらく手を出さないでいたが、図書館でパラパラめくってみたら全くそういう本ではなかった。 ごくごく普通の観光地巡りが淡々と綴…

『きょうの猫村さん1~6』を読みました。

『きょうの猫村さん1~6』 ほしよりこ著ぼっちゃんとの再会を目標に純粋に真っ当に働く猫村さんのようなおばさんに私はなりたいと思った。 それから、家政婦協会の奥さんのような、叩き上げのモラリストにも私はなりたいと思った。犬神家の奧さまとスケ子…

『そういうことがずっと続く』を読みました。

小説『そういうことがずっと続く』 そして、 抽出に入っていた手紙 ほしよりこ作この妻/母は大そう魅力的だと思った。 夫も息子も彼女に神秘を感じている。 うらやましい。 抽出の手紙は、口調は乱暴だけど、大そう頭の良い人の文章だと思った。 この彼女も…

『体の贈り物』を読みました。

『体の贈り物』 レベッカ・ブラウン作 柴田元幸訳主人公の、人を見る目線が良かった。 上からでもなく、下からでもなく、誰に対しても、ある種の友情を持ってその人を見ているのが良かった。 誰にでもすすめたくなる本。

『わたしが山おくにすんでいたころ』

わたしが山おくにすんでいたころ シンシア・ライラント 文 ダイアン・グッド 絵 もりうちすみこ 訳 80代の女性が小さいひとに読みきかせている場に偶然居合わせた。 最後のページで胸が「ぐわぁん」とした。

『エーミールと探偵たち』の日々 おしまい

エーミールと探偵たち エーリヒ・ケストナー 作 高橋健二 訳高速バスの中で読み終わりました。 ばんざい!ばんざい!ばんざい!

わたしはわたしの王女様である そしてその民である

8月に生まれる子供 大島弓子 2年ほど前の今時分、映画を見たあと喫茶店で話し合う会に共に参加した名も知らぬ女性と、駅までの道とホームに電車が来るまでの僅かな時間お喋りした。 その時、話題に上ったのが大島弓子だった。 わたしは わたしの王女様であ…

『エーミールと探偵たち』の日々 はじまり

エーミールと探偵たち エーリヒ・ケストナー 作 高橋健二 訳岩波の全集で読む。こないだ読んだ『わたしが子どもだったころ』同様、愛らしい装丁。少年文庫の装丁もシンプルでよいけどね。ケストナー、こんなにも私事を出す作家だったとは。遠いお国の、生きる…

『ハロウィーンがやってきた』の日々 おしまい

ハロウィーンがやってきた レイ・ブラッドベリ 作 伊藤典夫 訳まだ明るい夕方の電車内で爽やかに読み終えた。「いつも昼は終り、いつも夜が来る。それで、いつも心配しているんだろう、そこの猿人? ミイラでもいい、もしかしたら太陽はもうのぼってこないんじ…

『ハロウィーンがやってきた』の日々 はじまり

ハロウィーンがやってきた レイ・ブラッドベリ 作 伊藤典夫 訳晶文社「文学のおくりもの」シリーズ。歌を歌うように読めてしまう。 音読向きの文章だと思った。 滑らかに気持ちよく言葉の波に乗っていると、うっかり意味を取り損ねてしまう。 時々人間世界のホ…

『わたしが子どもだったころ』の日々 おわり

『わたしが子どもだったころ』 エーリヒ・ケストナー作 高橋健二訳電車内にて読了。 男の子の母親とはなんと幸せな存在なのでしょう! 男の子にもよるだろうけど。

『わたしが子どもだったころ』の日々 ヒースのかおり

わたしが子どもだったころ エーリヒ・ケストナー 高橋健二訳「わたしたちはコケモモの実を摘んだ。ヒースのかおりがした。松のこずえが音もなくゆれていた。」 ヨーロッパの小説に、たびたびヒースという植物が登場する。恥ずかしながら、どんな外見でどんな匂…

『わたしが子どもだったころ』の日々 はじめ

わたしが子どもだったころ エーリヒ・ケストナー 高橋健二訳 数日前から読みはじめた。 「忘れてしまったことは古く、忘れられないことはきのうあったことだ」 優しい断定。

『溶ける街 透ける路』の日々 おわり

溶ける街 透ける路 多和田葉子 台所の椅子に座ってのひと休みついでに読了しました。 現実は、それを映す個人の目によって、いくらでも変容するのですね。私も良い目を持つよう努めます、これからもっと。

『溶ける街 透ける路』の日々 デュイスブルグ

溶ける街 透ける路 多和田葉子私は無精者のうえ言葉ができないから、海外旅行は空想だけで十分と思っている。 けど、この本のデュイスブルグのページを読んで、実際に訪れてみたくなった。「自然になど全く遠慮せずに工業化だけをめざしてきた土地が急に工業…

田舎町のドーナツ屋

今のところ、夕方の田舎町のドーナツ屋が、私の読書に一番向いた空間です。高校生たちはドーナツと水でお喋り。ご婦人二人連れはパート帰りか。背広の人は珈琲だけを注文した。楽しげに弾む音楽と、きびきび働く店員の声。年配の女性が貴重な一人の時間を過…

『溶ける街 透ける路』の日々 はじめ

溶ける街 透ける路 多和田葉子東京のホテルの一室で『ファビアン』を一息に読んで以来、都市というものに思いを馳せるようになった。図書館で、何か軽めのもの、日本人が書いたもの読もうと思い、エッセイコーナーを彷徨いた。好きな多和田葉子のもので未読…

『ファビアン』の日々 終わり

ファビアン あるモラリストの物語 エーリヒ・ケストナー 丘沢静也訳後半一気に読み終えました。 もう、こんな時間!(午前2時) 1931年のベルリン、2016年の東京にそっくりです。 作者が当初考えていたタイトルは『犬どもの前に行く』。 ドイツ語で「破滅する」…

『ファビアン』の日々5

ファビアン あるモラリストの物語 エーリヒ・ケストナー 丘沢静也訳読み始めたとき、主人公は道徳家でもなんでもない、殺伐とした都会に生きるクールな若者その1で、この小説は、世の中を斜めから見るような、洒落た皮肉のような物語だと思っていた。けど、…

『ファビアン』の日々4

ファビアン あるモラリストの物語 エーリヒ・ケストナー 丘沢静也訳第9章、第10章を読み、また戻って第9章、第10章を読んだ。 これから甘いものが欲しくなったら、これを読もう。「ロマンチック」という単語を、会話のなかで口にしたら、話し相手の顔が、…

『ファビアン』の日々3

ファビアン あるモラリストの物語 エーリヒ・ケストナー 丘沢静也訳「君、わかってるのかな? もちろんわかってるよね。でもさ、君は、実現可能な不完全な目標にむかって努力するかわりに、むしろ、到達不可能な完全な目標を空想してるんだよ。そっちのほうが…

『ファビアン』の日々2

ファビアン あるモラリストの物語 エーリヒ・ケストナー 丘沢静也訳新聞社の面々と飲んで、店を出たあと、「ほろ酔いと並んで歩きながら」、地球が回っていることを思い、ふと、ドーミエの版画を思い出すファビアンが好き。この部分を引用しかけたけど、止め。…

『ファビアン』の日々1

ファビアン あるモラリストの物語 エーリヒ・ケストナー 丘沢静也訳これはケストナーの大人向け小説。 入り口からもう面白い。 子供が入っていきやすい本は、 形容詞や描写が少なく、 絵が頭にすぐ浮かび、 登場人物の個性がはっきりしているもの、 と、桃子…

『点子ちゃんとアントン』の日々 終わり

点子ちゃんとアントン エーリヒ・ケストナー 池田香代子訳日曜日の午前中、お布団の中で、足がだるくなって来ちゃったし、いい加減起きないと、と思いながら、あとがきについで奥付けを読み終えました。素晴らし!おしゃれ!今すぐ可愛らしい包装紙にくるんで…

『点子ちゃんとアントン』の日々2

点子ちゃんとアントン エーリヒ・ケストナー作 池田香代子訳この物語には、章ごとに、「立ち止まって考えたこと」という短い文章がついている。 作者が考える、人が生きてくために大切なあれこれがまとめられている。 私の好みでいうと、そういうの、要らない。…

『点子ちゃんとアントン』の日々1

点子ちゃんとアントン エーリヒ・ケストナー作 池田香代子訳実はこれがマイファーストケストナーです。 この世界が大好きです、まだ少し読んだだけで、もう既に。じゃがいもの塩ゆで、かき卵(スクランブルエッグのことでしょうか?)、それからハンバーグ。 私…

『まっぷたつの子爵』の日々 終わり

まっぷたつの子爵 イタロ・カルヴィーノ 河島英昭訳石油ストーブの前でうずくまり、最後のページを捲りました。戦争で体がまっぷたつに引き裂かれた「ぼくのおじさん」がおこす哀しい行動の数々を、青春期の「ぼく」が語ることで、自己という、とらえがたいテーマ…

『まっぷたつの子爵』の日々2

まっぷたつの子爵 イタロ・カルヴィーノ 河島英昭訳「なぜなら美も、知恵も、正義も、みな断片でしか存在しないからだ。」「まっぷたつへの憧れ」